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全司法本部活動日記 (Blog)

全司法労働組合のブログへようこそ!

寺田最高裁長官と会見

本日(11月22日)、全司法本部4役は寺田逸郎最高裁長官と会見しました。

会見の機会に以下のとおり、職場の課題を中心に全司法の問題意識を伝えています。

1.裁判所の人的態勢の整備について
(委員長)2015年の事件数を見ると、引き続き増加傾向にある家事事件に加えて、民事訴訟事件、刑事訴訟事件についても、新受事件数が減少から増加に転じていることに注目しています。
 この間、全国的に家庭裁判所の人的手当てがはかられてきていますが、今年4月には成年後見利用促進法が成立し、今後も引き続き、裁判所の役割が求められると考えています。家裁の問題では、少年の支援・更生や再犯防止の観点から、少年法の適用年齢に関する議論についても関心を持っているところです。
 刑事事件については、裁判員制度の安定的な運用とともに、被害者保護等の従来の刑事事件の枠組みにはなかった各種のとりくみについて、きめ細かな対応が求められていることなどが職場から報告されています。
 民事事件等での事件の複雑・困難化に対する対応も重要です。各種の紛争解決のために、引き続き適正・迅速な事件処理が求められているとともに、社会的な論点を含んだ多様な事件について裁判所が求められる役割が、ますます大きくなってきていることが感じられます。とりわけ、社会情勢が大きく動いているもとで、憲法にもとづいて、裁判所がその役割を果たすことが国民から求められていると感じています。
 また、人的態勢整備とあわせて、防災対策をはじめとした安全な庁舎設備、ITシステムの整備といった物的な面でも対応も必要だと感じています。
それぞれの職場状況をきめ細かく見ていただき、次年度に向けて、引き続き、各職場の人的・物的充実をお願いしたいと思います。
(長官)東日本大震災からの復興途上にある中で、この数年、度重なる自然災害により、社会的な不安が消えない状況となっています。他方、我が国の社会や経済の国際化、少子高齢化、組織や家族の多様化といった情勢の構造的な変化に伴い、裁判所に期待される役割にも変化が見られます。このような社会経済情勢の中、個別の事案、事件に妥当な解決をもたらすことを使命とする司法が、変化に即応しつつ、その役割を十分に果たしていくことは、安定した社会の基盤を確保するために極めて重要です。
 各裁判部門の実情をみると、民事の分野では、情報化の進展、国民の権利意識の高まり、価値観の多様化に伴い、裁判の質の向上が求められるようになっており、事案の実相を的確に捉えた質の高い審理判断を適切な期間内に行うよう努めていく必要がありますし、刑事の分野では、裁判員制度の運営について、公判前整理手続の長期化など、引き続き検討すべき課題に取り組んでいくためには、具体的な事案に基づいて、問題が生じる原因、あい路とそれへの対応策を実証的に検討し、その結果を実践して更に検討を加えるという地道な取組を組織的に続けていく必要があります。
 家事の分野では、家事事件手続法の趣旨に沿った手続運営が定着しつつあるところ、法的な紛争解決機能の強化に向けた取組を進めるとともに、国民にとって一層利用しやすい手続となるよう工夫を重ねていくことが求められています。また、成年後見関係事件が増加の一途をたどる中、今後も更に成年後見制度の利用促進が図られていくことが予想され、引き続き、社会のニーズに的確に応えられるような安定的な事務の在り方や処理態勢を検討していかなければなりません。 
 私たちは、これまでも、司法の果たすべき役割がますます重要になるという認識に立ちつつ、司法の機能充実・強化に努めてきましたが、こうした状況にあって、裁判所がその使命を果たしていくために、今後とも人的・物的態勢を整備していく必要があります。一方で、極めて厳しい財政状況の中、裁判所の態勢整備に国民の理解を得ていくためには、より一層の内部努力を重ねていくことが不可欠です。職員の皆さんには、引き続き御協力をお願いしたいと思います。

2.超勤縮減、「働き方の見直し」、事務の簡素化・効率化について
(委員長)今年の3月、最高裁は「女性活躍推進法」に基づく「裁判所特定事業主行動計画」を策定されました。
 労働組合の立場からは「働き方改革」という表現自体はやや違和感を感じるものの、「働き方の見直し」などを通じて、男女ともに働きやすい職場を作り、職業生活と家庭生活や社会生活との両立がはかられるようにすることは、私たちも実現を求めているところであり、そのことを通じて、女性の登用拡大がすすみ、次世代育成支援がはかられることは重要だと考えています。
 そのためには、事務の簡素化・効率化を思い切ってすすめ、超勤縮減を図ることが必要不可欠です。同時に、「持ち帰り」や「サービス残業」をなくすことは、超勤縮減を「絵に描いた餅」にしないためにも重要であり、一体的にすすめていく必要があると考えています。これは、職員の健康管理のうえからも重要な課題だと認識しています。
 こうしたとりくみとあわせて、裁判所の職場実態に見合ったフレックスタイム制の活用、ストレスチェック制度の有効な活用、8月の人事院勧告で出された両立支援制度が利用しやすい職場づくりなど、新しい仕組みが適切に運用されていくことが大切だと考えています。
 これらのとりくみの実施にあたっては、最高裁にリーダーシップを発揮していただく必要があると考えており、最高裁の積極的なとりくみを期待しています。
(長官)職員の皆さんに持てる力を十分に発揮してもらうには、心身の健康の保持、増進を図るとともに、家庭生活と両立していけるような環境整備を進めることが重要です。このような観点から、これまでも種々の施策を講じてきていますが、これまで以上に組織活力を維持・向上させ、全ての職員が、持てる能力を最大限発揮することができるよう、その実効性を高めるために工夫すべき点がないか等につき検討させていきたいと考えています。

3.職員の育成について
(委員長)昨年10月に「これからの人材育成について」説明があり、ОJTの仕組みの見直しが行われてから1年が経過します。育成に関する基本的な考え方が組織的に共有され、計画的なとりくみが組織的に実践されることが重要ですが、まだまだ職場では理解が深まっておらず、目的意識を持った実践が行われていないと感じる部分もあります。
 また、若い世代の育成の重要性は言うまでもありませんが、ベテランの職員の活用や育成についても重要な課題だと考えています。若い時期には多様な経験をすることが重要である一方、一定の年齢や経験を重ねた職員にとっては、それまでのキャリアの中で身に付けた経験や能力を活用できるようにし、組織の中で役割を果たすことが本人のモチベーションに繋がり、組織の活性化にも繋がるものだと考えます。
 とりわけ、数年後からは1980年代後半からの大量退職・採用期に採用された職員の定年退職が始まることが予想されるもとで、それらの職員が蓄積してきた知識や経験を引き継ぐことも重要な課題になってくるものと認識しています。
 なお、この間、全司法の会議等で「失敗を許さないという雰囲気が職場の中で強くなっている」と報告されることが増えており、懸念を持っています。国民の権利義務に関わる重要な任務を負う裁判所の事務処理として、正確な事務に心がけることは当然のことですが、一方で、そうした「失敗を許さない雰囲気」が圧力となり、従来踏襲の事務処理につながって組織の活力を失わせたり、かえってミスを報告せずに大きな過誤につながったり、メンタルヘルスの悪化につながるとすれば、むしろ、大きな問題であると考えています。
 現実の仕事は上手くいくことばかりではなく、職員は失敗を繰り返しながらも、そのことを糧にして経験や能力を培っていきます。職員が萎縮することなく、職場の中で協力し合い、自由闊達に議論しながら、のびのびと仕事をすすめる職場を作ることが重要だと考えており、そうした観点から育成者に対する指導や研修を充実していただきたいと考えます。
(長官)社会、経済状況の変化等を反映して、裁判所に求められるものがますます幅広く、深くなってきている中、これまでにも増して、一件一件の事件の適正・迅速な解決に向けて誠実に努めることにより、国民、社会からの信頼をより確かなものとしていくためには、若手から中堅層以上に至るまで職員一人一人の士気を高め、その能力を伸長させる人材育成が重要であることから、日常の執務を通じて成長を図る仕組みの一層の充実に努めたいと考えています。

4.全司法との誠実対応について
(委員長)1992年3月18日の最高裁事務総長見解以降、全司法と裁判所当局とは相互の信頼関係に基づいて、建設的な労使関係が築かれていると認識しています。
 全司法はこれまでにも職員の声を集め、現場の職員の視点から、当局に対し様々な課題で意見を述べてきていますが、相互の信頼関係にもとづき、そうした率直な意見交換を行うことを通して、様々な施策が立案、検証され、今の裁判所の職場のあり様ができあがってきたものと考えています。そうした役割をふまえ、私たちは今後とも、職員の地位の向上と「国民のための裁判所」実現を目指す立場から努力を重ね、意見を述べていきたいと考えています。
 引き続き、全国の各庁で、全司法の意見に耳を傾けていただき、率直で建設的な議論を積み重ねていけるよう、全司法との誠実な対応と健全な労使関係を築いていくことを確認したいと思います。
(長官)昨年も述べましたように、平成4年3月18日の事務総長見解の内容は当然のことと考えています。職員の勤務条件やこれに関連する事項については、これまで築き上げてきた相互の信頼関係に基づき、率直に問題意識をぶつけ合い、忌憚なく話し合う中で、問題の解決を図っていかなければならないと考えています。
 担当部局には、今後もそのような立場で努力させたいと思いますし、職員団体もその方向で努力していただきたいと思います。