全司法本部活動日記 (Blog)

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2019年新春宣伝行動

1月8日、2019年春闘のスタートを切る全労連・国民春闘共闘の新春宣伝行動がとりくまれました。

国公労連は虎ノ門で宣伝を行い、全司法本部もこれに参加。この中で、中矢委員長は弁士の一人として、以下のとおり話をしました。

 

新しい年がスタートしました。年の初めにあたって、多くのみなさんが今年の目標や抱負を考えられたことと思います。私も個人の目標と同時に、労働組合としての目標を考えてみました。一言でいえば「人間が大切にされる職場、人間が大切にされる社会を作ること」だと考えました。
みなさんの職場は「人間が大切にされる職場」でしょうか?
賃金はきちんと払われているでしょうか、特に不払い残業サービス残業はないでしょうか?それは、普通に生活できる額の賃金でしょうか?
長時間労働が常態化していないでしょうか?過労死の不安を感じることはありませんか?定時出社など夢のまた夢ということになっていないでしょうか?
休暇はきちんととれますか?年次有給休暇は働く者の権利として、理由を問わず、原則としていつでも自由にとれる休暇ですが…、本当に自由に取れていますか?
セクハラ・パワハラなどのハラスメントはありませんか?ハラスメントで辛い思いをした経験はありませんか?それが原因で体調を崩したり、職場を去った仲間はいませんか?
そもそも安心して働き続けることのできる職場でしょうか?派遣、パート、期間社員など、本当は正規で働き続けたいのに、非正規でしか雇ってもらえない実態はないでしょうか?
ブラック企業が話題になって数年以上が経過しますが、ブラックな働き方は、世界に名だたる大手企業であっても蔓延していますし、残念ながら、私たち公務の職場でも珍しくありません。それは、「人間が大切にされる職場」ではありません。変えていかなければなりません。

「職場なんてこんなもんだ」「我慢するしかない」「どうせ何も変わらない」…、職場で問題があっても、つい、そうした思いを持ってしまうかもしれません。しかし、それを解決するためにこそ、労働組合は存在します。あなたのその悩み、労働組合が力になれるかもしれません。
年が明け、これから春闘が始まります。民間も公務も労働組合が力を合わせて、職場を良くしていくとりくみを進める時期にあたります。私たちはこの春闘で「8時間働けば、人間らしく暮らせる労働条件」を目指して、それぞれの職場でとりくみをすすめることにしています。この場を借りて、みなさんにも、労働組合に加入されること、労働組合の活動に目を向けていただくこと、できれば活動に参加していただくこと、を心から呼び掛けたいと思います。「人間が大切にされる職場」を目指していきましょう。

 

次に、みなさん、今、日本の社会は「人間が大切にされる社会」でしょうか?
先ほどの職場の話は社会状況の反映ですから、そのことだけを見ても、「人間が大切にされる社会」にはなっていないと思います。普段は意識されないかもしれませんが、社会を変えるためには、根拠になる法律が必要になることが多いのです。例えば、私たちは今、職場におけるハラスメントを禁止する法律を作ってほしいと主張していますが、そうした法律ができれば、企業もそれに従って対策を立てていくことになるでしょう。

また、私たちは国家公務員の労働組合ですから、政府が今、どういう方向を目指して、法律を作り、予算を使っているのかが、日々の仕事を通じて見えてきます。
そこで見えてくるものは、この国の政治が「多国籍企業を中心とした大企業の利益」と「アメリカの要求に無条件で従う」ことを二つの柱にしているということです。もともとそういう傾向はあったのですが、6年前に安倍政権ができてから特にそうした方向性が強く、しかも、強引に進められるようになっており、これまでは曲がりなりにもあった「人間が大切にされる社会」を目指すという建前すら壊されてきていることに、危機感を感じています。

ここでも、「政治なんて自分の生活と関係ない」「どうせ何も変わらない」と思ってしまうと、とりあえず自分の目には映らなくなるかもしれませんが、政治はいずれ法律や予算になり、みなさんの暮らしや生き方を確実に変えていきます。
今年の4月には統一地方選挙、7月に参議院選挙があり、国民が自らの意思表示で政治の流れを変えることができる機会が訪れます。選挙に行って投票すること、政党に対する好き嫌いではなく「この選挙で誰が当選し、誰が落選させることが、人間を大切にする社会を作っていくうえで必要なのか」という立場から、批判票も含めてきちんと意思を示すことが必要だと考えています。

日本国憲法は13条で「すべて国民は、個人として尊重される」と定めており、個人の尊厳を謳っています。国民一人ひとりが幸せになるために国が作られている、言い換えれば「人間が大切にされる社会を目指す」ことが、今の憲法に書かれている一番大事なポイントなのです。
裁判所で働く者の労働組合憲法を尊重擁護する義務を負っている公務員の労働組合として、この1年、憲法にもとづいて「人間が大切にされる社会」を目指す活動に力を注ぐ決意を表明して、私からの発言とします。

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VPSU(ベトナム公共サービス労働組合)が訪問

全司法が加盟する国公労連は、2012年からベトナムのVPSU(ベトナム公共サービス労働組合)との組織交流を行っています。昨年は国公労連の代表団がベトナムを訪問しました(全司法から中矢委員長も参加しました)が、今年はベトナムからグエン・ゴック・ソン(Nguyen Ngoc Son)副議長を団長とする4名の代表団が来日されました。
12月18日の午前は全司法本部を訪問され、意見交換を行いました。
全司法からは、日本の裁判所と全司法の組織機構、現在の裁判所の課題、全司法のとりくみを紹介しました。それに対して、ベトナム側からは、全司法の組織状況や組織内での意見の集約方法、当局との交渉の持ち方、労働時間短縮の問題などについて質問がありました。
意見交換の後、大法廷などの最高裁庁舎をご案内し、記念品の交換を行いました。
ベトナムからは、最古の民族王朝タンロン文化の図案を刺繍した壁飾りをいただきました。

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「若年者に対する新たな処分」について

2017年2月9日、「少年法における『少年』の年齢を18歳未満とすること及び非行少年を含む犯罪者に対する処遇を一層充実させるための刑事法の整備の在り方」について法務大臣から法制審議会に対して諮問がなされ、現在、少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会において審議がすすめられています。
本年7月26日の第8回部会では「分科会における検討結果(考えられる制度・施策の概要案)」が報告され、その中で家庭裁判所が担う新たな制度として「若年者に対する新たな処分」が提起されました。
全司法は、裁判所書記官家庭裁判所調査官など少年事件に携わっている職員を組織する労働組合として、現場の職員の意見をふまえ、意見書(全司法労働組合少年法対策委員会作成名義の「『若年者に対する新たな処分』について」と題する書面)をとりまとめました。
同処分は様々な問題点があるものと考えており、少年法の適用年齢を引き下げに伴う措置とはなり得ないとの立場から意見を述べたものです。

http://www.zenshiho.net/shounen/26.pdf

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全司法本部が大谷直人最高裁長官と会見

全司法本部四役は、10月23日に大谷直人最高裁判所長官と会見しました。
その際、いくつかの課題について意見交換しましたが、裁判所の人的・物的充実については、以下のようなやりとりを行いました。

中矢委員長
国の機関で仕事をするうえで、また、労働組合で活動するために、社会情勢の動きを見ることは必要不可欠だと感じていますが、今は情勢が大きく動く、時代の節目ではないかと感じています。政治に関する情勢を見ると、国民主権、平和主義、基本的人権の尊重という日本国憲法を形づくる基本的な価値観が議論の対象になっていることに大きな特徴があるのではないかと感じています。そうした時に、三権分立のもと「憲法の番人」と呼ばれる裁判所の役割がきわめて重要になっており、多くの国民から求められているものだと考えています。
裁判所が国民の信頼を勝ち取ることは、そこで働く職員にとっても、自らの仕事に対するやりがいや誇りにつながるものだと考えます。
こうした社会情勢を受けて、裁判所に係属する事件も複雑・困難なものになっています。家庭や子どもをめぐる社会環境の変化を受けて、家庭裁判所が国民から求められる役割も大きくなっていますし、2002年の推進計画以来の司法制度改革の定着に加えて、裁判手続のIT化など新たな課題も提起されています。これらを着実に実行していくためには、引き続き、裁判所の人的・物的充実が重要だと考えています。
また、2017年度における新受事件の動向を見ると、家事事件、民事事件が増加していることがうかがわれます。この間、地裁・簡裁から家裁へ、地方から大都市へという人員シフトが続けられてきたことに対して、特に配置人員が少ない中小規模庁の負担感が強く、「人員シフトは限界」との声が強まっています。また、各庁の事務局について、増員を含む繁忙解消が最も強い要求として伝わってきています。
以上の問題意識をふまえ、各職場の状況をきめ細かく見ていただき、裁判所の人的・物的態勢整備をお願いしたいと思います。


大谷長官
平成も残すところ数か月となりました。この間を振り返ると、裁判の全ての分野にわたって、その態勢と機能を強化し、より身近で、信頼される司法を実現することを期して、大きな制度改革がされてきました。他方で、我が国の社会経済に目を向けると、国際化、少子高齢化、家族観の多様化といった構造的な変化は、今後もそのスピードを増していくことが予想されます。このような状況の下で、国民の信頼を維持し、その期待に応えていくためには、一人一人の裁判所職員が、組織の一員としての役割を意識し、社会経済の変化に対応して、国民のニーズに的確に応えていくことが望まれます。
各裁判部門の実情をみると、民事の分野では、裁判の質を更に高めていくことが求められていく中で、適正迅速な裁判を実現する方策として、合議の充実・活用を図るなどの取組が進められてきましたが、近時は裁判手続のIT化の検討も喫緊の課題となっています。裁判手続のIT化は、民事裁判の在り方を振り返るための重要な契機と捉え、裁判全体の適正化、合理化といった要素も視野に入れて推進されるべきものと考えています。
刑事の分野では、刑事訴訟法の改正により新たに導入されることとなった各種制度について、施行後の運用状況を注視しながら、円滑な実施を図っていくことが必要です。また、裁判員制度の運営においては、公判前整理手続における争点及び証拠の整理がその事件にふさわしい的確なものとなっているか、審理・評議において裁判員と裁判官との真の意味での協働が実現できているかといった大きな課題に正面から取り組んでいく必要があります。
家事の分野では、家庭裁判所の果たす役割への期待が、家庭を取り巻く多くの局面において同時的に高まっています。当事者間の価値観や感情の対立が激しく解決が困難な事件が増えており、紛争や問題の実相を捉えた適正な解決に導いていく必要があります。また、成年後見制度については、今後も更に利用促進が図られ、国民の関心はますます高まっていくことが予想されることから、引き続き、制度の適切な運用に努める必要があります。
私たちは、これまでも、司法の果たすべき役割がますます重要になるという認識に立ちつつ、司法の機能充実・強化に努めてきましたが、こうした状況にあって、裁判所がその使命を果たしていくために、今後とも人的・物的態勢を整備していく必要があります。一方で、極めて厳しい財政状況の中、裁判所の態勢整備に国民の理解を得ていくためには、より一層の内部努力を重ねていくことが不可欠です。職員の皆さんには、引き続き御協力をお願いしたいと思います。

裁判手続等のIT化に関する書記長談話

内閣官房に設置された「裁判手続等のIT化検討会」が3月30日、「裁判手続等のIT化に向けた取りまとめ」を行ったことを受けて、全司法本部は書記長名で以下の談話を出しました。

参考:裁判手続等のIT化検討会- 日本経済再生本部

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2018年4月3日
全司法労働組合 書記長 長岡 文生

 

司法アクセスの向上と国民が利用しやすい裁判所の実現を求める(談話)
(「裁判手続等のIT化に向けた取りまとめ」を受けて)

 

 政府は2017年6月9日に閣議決定した「未来投資戦略2017」において、「迅速かつ効率的な裁判の実現を図るため、諸外国の状況も踏まえ、裁判における手続保障や情報セキュリティ面を含む総合的な観点から、関係機関等の協力を得て利用者目線で裁判に係る手続等のITを推進する方策について速やかに検討し、本年度中に結論を得る。」とされたことを踏まえ、内閣官房に「裁判手続等のIT化検討会」(以下「検討会」という。)を設置し、検討会は3月30日、「裁判手続等のIT化に向けた取りまとめ」(以下「取りまとめ」という。)を行った。今後、民事裁判のIT化を念頭に法務省が中心となって、実務的、法理論的な検討がすすめられることとなり、最高裁においても運用面の具体的な検討が行われることとなっているが、裁判所の実務に大きな影響を与えることはもちろん、職員の働き方等にも密接に関わることから、政府や最高裁の検討に現場の意見を十分反映するよう求めるとともに、憲法が定める基本的人権の保障、国民の裁判を受ける権利の拡充をめざし、「司法アクセスの向上」と「国民が利用しやすい裁判所の実現」のための方策となるよう求める。

1 検討会においては、法律学者や裁判官経験者のみならず、経済界、企業法務やIT関連に精通する弁護士、消費者団体など、様々な立場からの議論がすすめられ、いずれからも裁判手続IT化の推進に大きな期待が寄せられ、裁判手続の利用者からみて非常に強いニーズがあることが示された。このことは積極的なものとして受け止めたい。この検討が財界の意向を反映した政府の経済政策の一環としてすすめられたことに留意しつつも、このようなIT化のニーズ等を踏まえれば、裁判手続のIT化は今後推進されていくべきものと言える。
 検討会の議論は「利用者目線」での検討が中心となっているが、検討会が示したいわゆる「3つのe」(e提出、e法廷、e事件管理)は、「裁判記録の電子データ化」と「通信技術の積極的な活用」が基礎となり、これらは裁判所における事務処理のあり方と密接不可分なものである。「国民が利用しやすい裁判所」は、利用者の利便性の向上と、実務を担う職員の安定的な事務処理が結合して初めて実現するものであるから、現場の実情や意見を踏まえた検討がなされる必要があり、職員の働き方や事務量の増加にも十分配慮されなければならない。

2 「3つのe」が実現され、将来にわたっても安定的に運用されていくためには、裁判所における相応の情報基盤整備が必要不可欠である。この間裁判所の各部門において様々な事務処理システムが構築・導入されてきたが、これまでも職員からは使い勝手の悪さが指摘されるとともに、サーバ容量の脆弱さに起因したレスポンスの低下やシステムダウンが生じるなど、必ずしも十分なものとは言えない状況が続いてきた。「3つのe」を前提とした新たなシステムを構築していく上では、こうした裁判所におけるIT化の経過と総括、職場実態を十分踏まえた上で検討されることが重要であり、電子記録を蓄積していくための大容量サーバの整備や高速通信が可能なネットワーク環境をはじめ、IT化に相応しい機器や施設整備など、裁判所における情報基盤の整備を改めて強化していく必要がある。そのためには、三権の一つである司法分野に関わる国民的基盤の整備として、十分な予算を確保して行うことが決定的に重要である。
 なお、取りまとめにおいては、情報セキュリティ対策について、「極めて高度かつ厳格なものまでは要求されず、基本的には、行政機関や民間の取引におけるセキュリティ水準と同程度のものを念頭に、合理的な水準を確保することが相当」としているが、裁判所が取り扱う情報は「個人情報の集合体」であり、秘匿性の高い情報は裁判部門、司法行政部門を問わず極めて多く存在している。こうした状況のもとで、裁判所における情報セキュリティ対策は最重要施策の一つとなっており、国民が安心して司法サービスを享受できるためには、高度なセキュリティレベルが求められることを付言したい。

3 裁判手続のIT化による司法アクセスの向上を推進していくためには、利用者に対するIT面でのサポート体制の構築や各裁判所における情報政策部門の創設・強化など、司法サービスを担う裁判所の人員を含めた体制整備は不可欠である。また、電子化された裁判記録の作成・管理をはじめ、通信技術を活用した裁判運営を支える裁判所書記官の役割はさらに高まることから、公証官としての専門性も含め、IT化を視野に入れた人材育成を強化することが重要であり、このことは、裁判部門を支える司法行政事務の担い手である裁判所事務官をはじめ、その他の官職についても同様の課題と言える。今後のプロセスとして、2019年度にはフェーズⅠ(現行法の下でのウェブ会議・テレビ会議等の運用)の試行も指摘されていることを踏まえれば、こうした種々の課題について、最高裁での検討を速やかに行うことが求められ、何より、裁判所の人物・物的態勢を充実させていく必要がある。
 今後の検討にあたって、取りまとめにおいても「裁判運営の中核に関わる問題」として、「司法府の自律的判断が尊重される必要がある」とされていることを踏まえ、私たちは、今後のプロセスにおける様々な課題について、裁判所職員を組織する労働組合として、組織の内外に対して積極的に情報発信や意見表明を行っていくとともに、引き続き最高裁との対応を強化し、要求の前進と国民のための裁判所実現に向けて奮闘するものである。


以 上