全司法本部活動日記 (Blog)

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成年後見制度の利用促進法について

昨日(23日)、朝日新聞が「成年後見制度の利用促進を図る議員立法が今月中に成立し、施行される見通し」と報道しました。

成年後見は事件数の増加や後見人に対する監督事務などの動向もあって、職場からの増員要求がもっとも強い部署になっており、この間、全司法でも人的態勢整備や安定的な後見監督事務のあり方などを要求してきたところです。

今回、法律が成立すると、首相をトップにした利用促進会議が内閣府に設置されるなどの措置がとられ、具体的な検討がすすめられるようですが、報道にあるような「市民後見人の育成と活用による利用促進」だけではなく、現行制度の問題点を総点検し、これに対する対策を立ててもらいたいと考えていますし、全司法としても何らかの発信が必要なのではないかと考えています。

昨年秋に全司法本部が実施した地連書記官担当者会議で、この間、裁判所で実務を行ってきた立場から、指摘できる主な問題点を以下のとおり整理していますので、今後、これをもとに組織的な議論ができればと思っています。

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① 成年後見人による被後見人財産の私物化や横領などの不正行為(犯罪となるものも含む)への対応

② 成年後見人に対する報酬(人材確保を含めた適正な報酬と、被後見人及びその親族の経済的負担のバランスをどう考えるか)

③ 成年後見人の候補者の不足(専門職後見人と親族後見人の棲み分けも含めて。現状、裁判所では事務の効率化と不正防止のために、専門職後見人を選任する運用を押し出す傾向にあるが、国民の立場に立つと、本来、親族が後見人になるのは自然であり、利用促進の観点からも重要である)

④ 後見支援信託制度の利用のしにくさ

とりわけ、裁判所における実務では、成年後見人の不正防止と、そのための監督に相当程度の労力を注いできた。そのあり方については利用促進と表裏の問題点として、ぜひ、検討してもらいたい。なお、職員の中には「後見人選任までは裁判所が行い、一般の監督は自治体等の行政機関に委ね、問題がある場合に裁判所が関与する仕組みにはできないか」との声がある。

また、利用促進という視点からは、特定の契約のための一時的な成年後見人の選任の可否、成年後見にかかる費用(後見人報酬、後見支援信託制度を活用した場合の費用など)の低額化も、検討が必要ではないか。

なお、全司法に対する提言・アドバイスをいただいた成年後見人経験者の弁護士、司法書士からは、地方自治体の態勢強化が重要との指摘を受けている。

(中矢)

headlines.yahoo.co.jp