全司法本部活動日記 (Blog)

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「少年法適用年齢引き上げ反対」で大会特別決議

全司法は7月21~23日に第76回定期大会を開催し、その中で、少年法の適用年齢引下げに関わって、以下の決議を採択しました。

 

少年法の適用年齢引下げに反対する決議(案)

 

2017年2月9日、「少年法における『少年』の年齢を18歳未満とすること及び非行少年を含む犯罪者に対する処遇を一層充実させるための刑事法の整備の在り方」について法制審議会に諮問され、現在、少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会において審議がすすめられています。
公職選挙法で選挙権を行使できる年齢が18歳以上となり、民法の成年年齢が18歳に引き下げられることが決まったもとで、これと年齢を揃えることが少年法の適用年齢引下げ論の根拠とされていますが、そもそも、適用年齢は目的に沿って法律ごとに定められるべきものであり、一律に揃える必要はありません。
家裁調査官、裁判所書記官など、現場で実際に少年事件に関わってきた多くの者が18歳・19歳を少年法の適用年齢から外すことについて、実態にそぐわない違和感や問題意識を持っています。18歳・19歳は経済的・社会的にはまだまだ成熟していない、まさに少年法に相応しい人たちです。高校卒業、進学・就職という人生の転機を迎える年齢であることから、その躓きが「非行」という形で現れるケースもある一方、成長・発達段階において、生活環境の変化等によって立ち直るきっかけを掴む可能性が大きい年齢でもあります。少年事件の現場でも、家庭裁判所や少年院が実施する教育的措置の効果が現れやすく、更生の可能性が高い年齢であり、こうした18歳・19歳を少年法の適用年齢から外すことは、本人の更生にとっても、再犯を防止して安全な社会を作るうえでも、百害あって一利なしです。
また、少年法は教育を目的とした法律であるため、まだ非行に至らない段階や軽微な事案であっても保護的措置、教育的措置をとることができる仕組みになっており、時には社会からドロップアウトする危険性のある若い人たちを保護するセーフティネットの役割を果たしてきました。その大きな柱が「すべての事件が家庭裁判所に送られ(全件送致)、家裁調査官の調査や裁判官による審判を受けたり、様々な教育的措置が行われる」ことです。18歳・19歳をこうした枠組みから外してしまうことは、家庭裁判所の福祉的・教育的機能を大きく後退させることにつながります。
ところが、法制審議会における審議は、もっぱら犯罪者処遇のあり方に議論の中心が置かれ、18歳・19歳の実態や、これを少年法の適用年齢から外すことの法的・刑事政策的な課題について十分な検討が行われているとは言えません。家庭裁判所が担うことが検討されている「若年者に対する新たな処分」も、法的に様々な矛盾が指摘されるとともに、少年法が果たしている役割の代替とはなり得ない制度です。実務においても、出頭確保や家裁調査官による調査のあり方など、運用や効果の面でも多くの問題が懸念されます。現行の少年法の適用年齢を維持し、家庭裁判所の人的・物的充実を図っていくことこそが、国民から負託された家庭裁判所本来の役割を果たすのにふさわしい在り方だと考えます。
私たちは、少年法の適用年齢引下げに反対し、家庭裁判所の福祉的・教育的機能に相応しい事件処理体制の確立をめざしてとりくみをすすめることを決意します。
以上、決議します。


2019年7月23日
全司法労働組合第76回定期大会