全司法本部活動日記 (Blog)

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「家裁調査官の少年事件事例集 18・19歳の事件簿」

全司法本部に設置した少年法対策委員会は、2020年7月、パンフレット『家裁調査官の少年事件事例集 18・19歳の事件簿』を発行しました。

データを掲載していますので、ぜひ、お読みください。

http://www.zenshiho.net/shounen/20200731.pdf

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「家裁調査官の少年事件事例集 18・19歳の事件簿」をお読みいただく方へ

 

2020年8月 全司法労働組合 少年法対策委員会

 

このパンフレットは、家庭裁判所の「教育的措置」と呼ばれる、「少年の立ち直り」に向けた少年法に基づくとりくみの実態を多くの方に知っていただく目的で作成しました。したがって、とりあげた事例は、一般に「重くない」と言われる罪名で、結論としても少年院送致にはなっていません。これは、家庭裁判所が果たしている役割を知っていただくために、あえて少年院での矯正教育に至らない段階のものをとりあげたからです。
家庭裁判所は、非行事実だけではなく、要保護性も踏まえてとりくみを行っているため、このような「重くない」とされる事件であっても、少年の成育歴や置かれた環境などに応じて、様々な教育的措置を行っています。

このパンフレットは、シンプルに「18・19歳が少年法の対象外となること」を想定して、これに反対する立場から作成しました。
自民、公明両党のプロジェクトチーム(PT)が「適用年齢を引き下げず、改正民法施行に伴い成人となる18、19歳も少年法の対象とし、原則検送事件を拡大する」ことで合意したことが新聞等で報道されています。法制審議会少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会も、こうした方向で検討を進めているとのことです。これによれば、本事例集に記載した多くのケースは引き続き、これまでどおり家庭裁判所が扱うことになるかもしれません。
しかし、少年法に対する誤解にもとづく世論があり、「適用年齢引下げ」(さらには少年法不要論)の意見が根強く存在することをふまえると、議論の前提となる家庭裁判所の役割や少年事件処理の実態を伝えることが重要であり、このパンフレットをお読みいただく意義は十分にあるものだと考えています。

なお、原則検送事件を拡大することについては、そもそも原則検送の制度自体が「少年法の原則と例外を逆転させる異質なもの」であることに加えて、現行制度の「被害者の死亡」という重大かつ明白な結果が発生している場合と比較して、強盗などでは発生した結果や行為態様に様々なものがあり、罪名のみで判断して原則検送の対象とすることには、より慎重な検討が必要です。
原則検送となった事件は、このパンフレットでご紹介する家庭裁判所における教育的措置の対象から実質的には外れることになります。ここに記載した教育的措置の多くは、最終的な処分を家庭裁判所が決定することを前提として行われているものであり、原則検送となった事件について、家庭裁判所ができることはきわめて限られたものにならざるを得ません。
推知報道実名報道)の禁止等が少年の立ち直りにおいて重要な役割を果たしていることは事実であり、慎重な議論が必要です。また、18・19歳についてぐ犯(CASE1参照)を一切認めないとことは、現状の女子少年院の収容者状況(3割程度はぐ犯少女)等から考えても、同じく慎重な議論が必要です。

私たちは以上のことをふまえ、改めて少年法の適用年齢引下げに反対を表明するとともに、このパンフレットを通して、家庭裁判所の役割や少年事件処理の実態を知っていただくようお願いするものです。