全司法本部活動日記 (Blog)

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寺田最高裁長官と会見 (2017.11.27)

全司法は年1回、最高裁長官との会見を持っています。
今年は、本日(17日)、寺田逸郎長官と会見を実施しました。会見の場では、裁判所における諸課題について意見交換することとしていますが、そのうち、裁判所の態勢整備に関わってのやりとりを掲載します。

 

中矢委員長 本日の会見にあたって、全司法労働組合として持っております問題意識のいくつかの項目について意見を述べさせていただき、長官のお考えをお聞かせ願いたいと思います。

寺田長官 委員長の御意見は承りました。
当局と職員団体という立場の相違はありますが、今後ともこれまで同様、相互の信頼関係に基づき、いろいろな問題について、率直に意見交換をしながら、より良い方向で解決していってもらいたいと思います。

中矢委員長 社会・経済情勢が複雑になっているもとで、「憲法の守り手」としての裁判所の役割に対する国民の期待がより一層、高まっていることを感じています。
家庭裁判所の充実・強化は、引き続き重要な課題だと認識しています。事件数が引き続き増加し、内容も複雑・困難化するとともに、面会交流のあり方、児童虐待への対応や、今後、成年後見利用促進法にもとづくとりくみも本格化するなど、現代の社会情勢を受けた新たな国民からの期待もかかっているところであり、家裁調査官も含めた人的態勢の強化が必要です。
地方裁判所簡易裁判所においては、2016年は民事事件が増加に転じるとともに、複雑困難化する事件を適正・迅速に処理する必要性は引き続き高く、刑事事件では、裁判員裁判の充実はもとより、医療観察事件や被害者保護のための諸制度など、従来の刑事裁判の枠組みを超えた事務処理も重要になっています。また、民刑いずれの事件においても、秘匿情報等の管理が新たな課題となっています。
セキュリティ対策をはじめ、事務局の事務も増加し、全司法が行った調査に対して、最も繁忙で人的手当が必要な部署として事務局をあげる庁が少なくありません。
具体的な人員配置については、これまで大都市への人的手当てが重点的に強化されてきましたが、地方の中小規模庁も含め、バランスのとれた人員配置が必要なのではないかとの問題意識も持っています。また、女性職員の増加を契機として、ワークライフバランスの実現に向けた人的手当てを求める声も強くなっています。
以上の問題意識もふまえ、各職場の状況をきめ細かく見ていただき、裁判所の人的態勢整備をお願いしたいと思います。

寺田長官 日本国憲法の施行と同時に新しい裁判所制度が発足してから70年が経過する今日に至るまで、我が国の社会経済情勢は大きく変遷し、また、社会構造にも重要な変化が見られるようになってきました。こうした中、国民の権利を救済し、適正な法的紛争解決を通じて「法の支配」を実現することを不変の使命とする裁判所の役割はますます重みを増しており、これまで以上に、社会の多様でスピーディーな変化に対応できる柔軟性を備え、その法的ニーズに的確に応えていかなければなりません。
各裁判部門の実情をみると、民事の分野では、社会経済情勢の変化を背景として、複雑困難な事件や、判断の結果が社会経済や国民生活に大きな影響を及ぼし得る事件が増えてきており、裁判の質の向上が求められるとともに、合理的な期間内に妥当な結論を示すことが期待されています。
刑事の分野では、刑事訴訟法の改正により新たに導入されることとなった各種制度について、適切な運用を確保することが検討課題となっています。また、裁判員制度の運営においては、公判前整理手続の長期化や控訴審における審理判断の在り方など、引き続き検討すべき課題にとりくんでいく必要があります。
家事の分野では、成年後見関係事件が増加の一途をたどる中、新たに成年後見制度の利用促進を図る法律が施行されたところであり、制度に対する国民の関心や期待に的確に応えられるよう、更なる取組を進めていかなければなりません。
私たちは、これまでも、司法の果たすべき役割がますます重要になるという認識に立ちつつ、司法の機能充実・強化に努めてきましたが、こうした状況にあって、裁判所がその使命を果たしていくために、今後とも人的・物的態勢を整備していく必要があります。一方で、極めて厳しい財政状況の中、裁判所の態勢整備に国民の理解を得ていくためには、より一層の内部努力を重ねていくことが不可欠です。職員の皆さんには、引き続き御協力をお願いしたいと思います。